一方杉の月食 橋口美香 |
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月食を待つ | 古道ツアー初日、一方杉の宿・野中山荘で、 今夜、月の出直後から月食があると、みんなで庭に出た。 しかし、 正確な時間がはっきり分からず、寒いので、一人減り、二人減りしていった。 真夏とはいえ肌寒い暗闇の中、武知さんと赤田さん、私と三人だけが残って、 夜空を見上げながら辛抱強く待っていた。 宿の窓のカーテンを閉めて、暗くしたら、星が急にたくさん輝き出した。 小さな星さえもあざやかに光出した。 私たちはロマンチストだなぁと思ったりした。 |
断念寸前 |
ところが1時間待ってもなかなか月食は現れない。 大阪の夫に携帯電話で問い合わせたら、大阪は天候が悪いが、 どうも東南東の方角で夜7時25分から8時22分には終わると聞いた。 立ったり座ったり落ちつかず、場所を高所へ代えたりしながら、 夢中で月食を探して、刻一刻と月食が現れるのを待った。 時はすでに7時25分も過ぎ、月食は始まっている筈だが、 周りの黒々とした山が高くてか、 姿が現れないまま、とうとう終わる筈の8時21分になった。 |
あった! あった! |
誰もが気持ちがしびれをきらして、「もうだめ!」と断念しかけた、 時あたかも、山の一番高いところから赤いものがちらっと見えた。 夕焼けぽいもので赤黒い丸いものだった。 あ、月食だ!あった、あった!と同音に叫んだ。 すぐさま、携帯で村岡に電話で報告をしたら、大阪では曇り空を恨んでいるようだ。 |
一筋の流れ星 | 興奮して、その時のことははっきり覚えていない。 写真やビデオを何回も撮った。 良かった、良かった!と目を凝らして月食を見上げていた。 他のみなさまも気づいて、出てきた。 そのとき、 私は一筋の流れ星を見た。誰かが「いいことがある」と言ってくれた。 ホントに何かいいことがあれば嬉しいな。 |